2017.09.16 A.I., ニュース

いまどきAIは古い!?FinTech時代に注目されるIAとは?

今は人工知能(AI)が流行していますが、これからの時代は、IAが主流になるそうです!

 

「FinTechとAIが導く金融の未来–AIよりもIAが重要」

「FinTechで重要なのはテクノロジである」と語るのは、機械学習の自動化ツールを提供するDataRobotのグローバルフィンテック担当ゼネラルマネジャーであるジャスティン・ディッカーソン氏だ。

その理由を同氏は「金融取引と顧客の間の障壁を取り除けるのがテクノロジ。優秀な銀行員が属人的に提供していた高品質のサービスを、テクノロジにより誰もが提供できるようになる。これが、FinTechのメリットだ」と語る。

国によっても定義は異なるが、FinTechには、「レンディング」「ペイメント」「ロボアドバイザー」「ブロックチェーン」の4つのカテゴリがある。レンディングは、お金を貸したい人と借りたい人をつなぐ仕組み、ペイメントは、オンライン決済の仕組み、ロボアドバイザーは、資産運用を自動化する仕組み、ブロックチェーンは、未知数の部分が多いものの、今後の金融業界の新しいインフラとして注目されている仕組みである。

ディッカーソン氏は「VENMOという個人間の送金を可能にするサービスがある。スーパーボールのテレビ放映中に、“ママ、ビール代を送金して!(VENMOのID)”というプラカードを掲げた少年が映ったが、この少年のVENMOのIDにママ以外の多くの人からビール代が送金されたこともある」と笑う。VENMOのようなほほ笑ましい事例とは別に、マネーロンダリングをいかに防ぐかといった物騒な一面もFinTechにはある。

「どちらがより重要かという話ではなく、どちらにも注目しなければならない」とディッカーソン氏は言う。マネーロンダリングの検出においては、高速かつ大量のトランザクションの中から、いかに不正な取引を効率的に見つけられるか重要になる。ここに、DataRobotの機械学習による自動化の技術が応用されている。また、異常検知の自動化にも利用され、より安全な金融サービスの実現を可能にしている。

 

金融業の無駄や不便をなくし利用者に価値を提供するのがFinTech

「最初に“FinTech”という言葉を聞いたとき、当たり前の言葉が重ねられているなと思った」と話すのは、データを活用したコンサルティングを事業とするギックスの代表取締役CEO(最高経営責任者))である網野知博氏だ。「“データサイエンティスト”という言葉もそうだが、サイエンスにはデータが不可欠。同様に、金融業においては、テクノロジが不可欠である。テクノロジのイノベーションをけん引してきたのが金融業界だ」と網野氏は言う。

網野氏は、「FinTechの本質を考えてみると、金融業界の無駄や不便をなくし、顧客がより利用しやすい仕組みを作ろうという取り組みの総称だ。一般的に、新しいテクノロジを使って、革新的な金融サービスを生み出すのがFinTechであるというイメージがあるが、枯れた技術であっても、新しい金融サービスを生み出すことができれば、それはFinTechと言える」と語る。

例えば、国内の為替取引に関しては、古くから「全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)」が構築されており、すべての銀行は全銀ネットに参加しているが、この仕組みは非常に高コストな仕組みのため、利用者に手数料という不便を与えている。「為替取引のコスト低減は、新しく市場に参入する側にとっても、消費者にとっても意味がある。そこで、近年高く注目されているのがブロックチェーンである」と網野氏は言う。

 

金融機関に限らないが、多くの企業で雑務処理にさまざまな無駄や不便が発生しており、これを解消するためのテクノロジが登場している。網野氏は「ロボットによる処理の自動化(RPA:Robotic Process Automation)もその1つ。ロボアドバイザーのように、機械ができることは機械に任せ、人はより効率化や生産性の向上を目指す、人にしかできない取り組みに注力すべきだ」と話している。

 

FinTechか既存のIT投資かを考えるのは時間の無駄

FinTechは、金融業界全体を大きく変革させるのか。それとも、金融業務の一部の変革にすぎないのか。ディッカーソン氏は、「FinTechの今後の在り方は、基本的には利用者側がけん引していくことになる。例えば、過去10年間で、わざわざ銀行の窓口に行かなくても、ほとんどの金融取引がネットでできるようになっている」と語る。ネットバンキングは、平日は忙しくて銀行に行けない利用者の要望に銀行が応えたものだ。

こうした取り組みの一環として、次の新しい金融サービスを生み出すためのテクノロジとして注目されているのが、FinTechと人工知能(AI)の組み合わせである。

ディッカーソン氏は「一部にせよ、全体にせよ、大きな変化の中で、今後、新たなビジネスを生み出していくためにも、より効率良くビジネスを推進するためにも、AIの活用がポイントになる。そのために必要なテクノロジを、DataRobotは提供している」と語る。

一方、金融業界におけるFinTechへの投資額はまだまだ小さいが、今後どのように変化していくのか。網野氏は「世の中の無駄や不便を解消する目的において、これはFinTechへの投資なのか、既存のIT投資なのかを考えること自体が無意味。日本企業では、FinTechへの投資とした方が、稟議が通りやすいので、テクニックとして使うのはいいが、FinTechか否かを考えるのは時間の無駄である」という。

「ギックスは、ビッグデータを取り扱う企業として創業約5年になるが、クライアントから“うちの会社はデータ量が少ないのでビッグデータはありません”といわれることがある。ビッグデータは、データ量の問題ではなく、データを活用していかに成果を出すかが重要なはず。FinTechも同じで、一生懸命に定義を考えるのではなく、その技術を活用することで、いかに成果が出るかを考えるべきである」(網野氏)。

 

「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のがDataRobot

FinTechにおいて、テクノロジは重要だが、テクノロジそのものが重要なのではなく、どう使うかが重要になる。網野氏は「最新のテクノロジで既存の仕組みを置き換えるのではなく、既存の仕組みをいかに効率化、自動化できるかを考えるべき。われわれもDataRobotを利用しているが、これまでのビジネスインテリジェンス(BI)ツールとは、一線を画したツールだと感じている」という。

これまでのBIツールは、プロフェッショナルが使うツールだった。統計解析やモデリングのプロが利用することで、一発必中の的確な予測が可能になる。一方、DataRobotは、統計解析などの専門知識がなくても、手軽に分析して結果を出せる、いわば「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のBIツールである。「ただ、そのためには、たくさんの弾(データ)を、いかに速く、正確かつ大量に作るかがポイントになる」と網野氏は言う。

網野氏は、「DataRobotを活用する場合、どのようなアナリティクスのプロセスを構築しなければならないかを考えた。必ず成功する分析結果を求めるプロセスには、専門的な知識が必要になる。一方、100個の分析結果から3つの成功を導く分析プロセスもある。どちらの成功が正しいかは状況により異なるが、いかにテクノロジを活用すれば、最も成果が出せるかを考えることが重要になる」と語る。

ディッカーソン氏は「DataRobotは、BI的なテクノロジだが、ほかのBIツールと違うのは、実際にビジネスを動かしている人たちが、自分たちの問題を解決できるツールであるということだ。自分自身、DataRobotのユーザーから、DataRobotに転職したのだが、ユーザーの立場でいろいろなツールを試してきて、DataRobotは機械学習の専門家のためだけではないツールであるということを十分に理解している」と話している。

 

意思決定を自動化できる時代まではAIよりもIAが重要

FinTechとAIの組み合わせは、金融業界にどのような未来を見せてくれるのだろうか。ディッカーソン氏は「今後、ブロックチェーンが、さまざまな分野で大きなインパクトをもたらすと考えている。例えば日本では、不動産登記をブロックチェーンで1つにまとめようという動きがあると聞いている。こうした分野にAIを組み合わせることで、現状では実現できない、新たな価値の提供が期待できると考えている」と語る。

ブロックチェーンがいろいろなところで使われるようになると、これまで電子化が難しかった不動産取引のような小さな単発の取引を電子化することができる。また、これまで与信にコストがかかっていたクレジットカード取引においても、コストを限りなくゼロに近づけることができ、キャッシュレスの世界を実現することもできる。この段階では、さまざまなデータを活用した、AI、機械学習、ディープラーニングも有効になる。

AIについて網野氏は、「最近、AIブームだが、コンサルティング業界では、“知能増幅(IA:Intelligence Amplification)”が注目されている。これまでは、顧客に価値ある提言をするために、時間と工数をかけて分析を行い、結果を出していた。DataRobotは、とりあえずの分析を繰り返すことで知識を増幅できる。機械が完全に意思決定してくれる時代がくるかもしれないが、それまではAIよりもIAが重要になる」と語る。

ディッカーソン氏は、「よく、“今後は機械学習がすべての問題を自動的に解決してくれるのか”と聞かれるが、答えは“ノー”だ。完全な自動化はまだ先で、どうしても人の介入が必要になる。ただし、大きな変化は、既に始まっている。現在のFinTechは、既存インフラの少ない途上国が先行し、先進国はまだキャッシュに依存している状況だが、この状況がどのように変化していくかを興味深く見守っていきたい」と話している。

(記事引用元: ZD Net Japan