2017.09.10 A.I., ニュース

人工知能のミュージシャン。小室哲哉さんに聞いてみた…

人工知能は音楽家を変えるのか。早くからシンセサイザーなど最新の音楽機器を駆使してきた小室哲哉さんは「音楽の世界でも、人工知能に人間が時々負けて、時々勝つ。なんてことが起きるかもしれません」と話します。一方で「最終的に音楽の価値を決めるのは人間」と語る小室さん。人工知能がもたらす未来について聞きました。

(画像引用元: livedoor NEWS

 

「予想外のことやってくれるか、まだわからない」
人工知能は音楽の世界にも浸透しつつあります。最近では、AIの技術を使ってビートルズの楽曲をベースにした「新曲」が発表されています。

デジタル技術と音楽の関係について小室さんは「使っているといえば、何十年も前からアシスタントとして使っている」と言います。

曲作りの際、過去の曲を瞬時に呼び出して参考にしたり、シンセサイザーを使ったり。人工知能が騒がれる前から、最新の技術を仕事に取り入れてきました。

一方で「予想外のことをやってくれるかどうかは、まだわからない」とも。

「シンセサイザーのつまみをいじると、想像もしない音が出てくることがあります。でも、この『いじる』という行為は人がやっている。曲のデータベースも基本的にはサポーター」

指示通りに動くこと以上の驚きは、まだ体験したことがないと言います。
「音楽は押しつけられるものではない」
人工知能を使っておすすめの曲を選んでくれるサービスが生まれるなど、音楽の楽しみ方も変わりつつあります。

それでも小室さんは「音楽の基本部分はあまり変わらない」と言います。

「音楽ってもともと、そこまで集中しなくても、なじんで入ってくる存在。よし聞くぞ、好きになるぞ、という楽しみ方ではなかった」

現在、人気のストリーミングサービスは、膨大な数の曲のデータベースが売りです。ネットがあれば、昔のように発売日にレコード店に行く必要もありません。

小室さんの言う「自然に耳に入ってくる」存在としての音楽は、人工知能など最新のテクノロジーやサービスによって、役割が増してきているとも言えます。

「音楽は押しつけられるものではない」と言い切る小室さん。

「でも、音楽がない時に『ああ、あれ聞きたいな』とか、新しい曲を聴いたとき『今、出会った曲、大切にしたいな』となれるのか。人工知能が出てきても、そういう音楽の価値は変わらないんじゃないでしょうか」と話します。
「経験がなくてもできちゃう人。それが天才」
90年代を中心にダンスミュージックも多く手がけてきた小室さん。最近では音楽フェスのようなイベントが人気です。

「フェスは視覚的な効果や演出などストーリーが大事。人工知能がゼロからフェスを作ることはできないんじゃないでしょうか」と指摘します。

「一度、経験すればどんどんうまくなるのが人工知能。逆に経験がないと何もできない。それは人間も同じです。そして、時々、経験がなくてもできちゃう人がいる。それが天才と呼ばれる人なんだと思います」と語ります。

人間の役割については「ゼロを一にする。丸を棒にする。それって最も大きな驚きだと思います。その後は数字の組み合わせに過ぎない。それができるのは人間だと思う」
「石ノ森章太郎さんは、やっぱりすごい」
小室さんは2017年8月、仮面ライダービルドの主題歌『Be The One』を、浅倉大介さんとのユニット「PANDORA」で手がけました。

今回、あらためて仮面ライダーと向き合い、人間にしかできない「最初に生み出すすごさ」を実感したと言います。

「石ノ森章太郎さんは、やっぱりすごいですね。今も生き続けている。そんなキャラクターを、最初に名付けた。これは、すごいなと思います」

曲作りの際には、これまでの仮面ライダーファンである男の子を意識しつつ「ターゲットはあまり絞らないように考えた」そうです。

「仮面ライダーは、もはや親子で楽しめる存在になっているんじゃないか。今も仮面ライダーを楽しめる気持ちを持った人にも聞いてもらいたい。そう考えると、マーケットなんてどこにもなくて、逆にターゲットは、すごく巨大になるのかなと思いました」

「アンダーコントロールというのはまず不可能」
現在の音楽ビジネスについては「あるジャンルについて、すごく熱い人と冷たい人の差が激しい時代」だと見ています。

過去に百万枚以上のヒットを連発してきた小室さんですが「もしかしたら、満遍なくっていう気持ちでやる音楽というのは、ぬるくなってしまい危険かもしれないです」

好みがはっきり分かれる一方、小室さんは「ジャンルを飛んで別の曲にも出会いやすくなっている」と言います。

「エンドユーザーという人ほど、すごく、フレキシブル。自由度が高すぎて、そんなに思うように動いてはくれない。時代の変化を感じます。アンダーコントロールというのはまず不可能です」

自由になった一方、聞き手に届く曲の数には限界があります。そんな時代を音楽の作り手としては「長持ちするのが難しい」と実感しています。

「自由すぎて、いろんな音楽をやってもいいけど、(聞き手に届くまでの)ゲートの大きさは変わっていない。能力のない人はすぐ落ちちゃうし、10年、音楽をやり続けているような人が少なくなっています」
「今まで活動してきた自分の世界観を形にしたい」
そんな時代、小室さんが大事にするのが「自分なりの音楽を突き詰めること」です。

「90年代から今まで活動してきた自分の世界観。それを音楽で形にしていきたい。それぞれの曲は違うんだけど、俯瞰(ふかん)すると何か色がでている。そうなると、大成功だと思う」

ユーザーの好みが多様化し、それを加速させる様々なサービスが生まれる現代。音楽家に求められるのは「人としてのセンス」だと言います。

「センスを磨いて、維持する。人間だとこれくらいで飽きちゃう、みたいなのがわかるように。集中力も、記憶力も、AIほど忍耐強くないから」
「いい音楽、最終的に決めるのは人間」
小室さんは、遠くない未来、作詞家、作曲家、編曲家に(IBMが開発した)ワトソンのようなAIの名前が入ることも考えられると言います。

「でも、囲碁や将棋のように勝負がないのが音楽。人工知能と人間が名前を一緒に連ねるんだけど、どっちの音楽がいいかは最終的に人が決める」

「時々、まけてもいいし、勝ってもいい」

それでも人間にしかできないことは「いつか、自分が無くなってしまうことを自覚できること」。

「いつか曲作りができなくなる恐怖。機械は警告は出すけど、本当に怖がることはできない。そんな感覚までAIが持ち出したら、すごいと思う」

 

(記事引用元: livedoor NEWS